プレイングマネージャーからの脱却
静まり返った夜の職場で、1人資料を仕上げる。
「自分がやったほうが確実だ」と自分に言い聞かせながら、「この状況はいつまで続くのか」と不安を感じていませんか。
現場仕事の積み重ねによって、本来のマネジメント業務が後回しになってしまう。そう感じているなら、それはあなたの意思や努力の問題ではありません。
優秀なマネージャーほど陥りやすいトラップから抜け出すための、明日から実践できる行動についてお話しします。是非、最後まで読んでお試しいただけると幸いです。
【目次】
- 現場から離れられない理由
- 組織の停滞
- 現場に縛りつける原因
- 仕事を任せる方法
- マネジメントの役割転換
- まとめ
1.現場から離れられない理由
なぜ、部下より遅くまで現場作業を抱え込んでいるのでしょうか。仕事を手放せないのは、決して手際の悪さや能力不足が原因ではなく、理由はむしろ真逆にあります。
現場を誰よりも熟知している優秀なマネージャーだからこそ陥りやすい問題があるのです。
品質へのこだわりや部下への配慮、そして強い責任感。皮肉にも、こうしたマネージャーの経験値が、自らを現場に縛りつける原因になっているのです。
具体的には、以下の3つの根本的な理由が影響しています。
1️⃣ 自身の「高い基準」が、仕事を任せる壁になる
かつて現場のエースだった人ほど、仕事に対して妥協のない品質基準を持っています。「ここまでやって当たり前」という100点の基準が明確なため、部下のアウトプットが60点や70点に見えると、強い違和感を覚えます。
「これではお客様に出せない」
「説明するより自分が直したほうが早い」など。
こうした判断はプロとしては決して間違っていません。でも、この高すぎる基準がマネージャーを現場に縛りつける原因です。手を出せば出すほど部下は成長の機会を失い、マネージャー自身も現場の「お助けマン」という役割からいつまでも解放されません。
2️⃣ 部下への配慮が、かえって成長の機会を奪う
部下思いの優しい上司ほど、「みんな手一杯だから頼みにくい」と感じ、自分の業務に追加してしまう傾向があります。こうした部下への配慮は、すばらしい姿勢ですよね!
しかし、マネージャーとしては視点を変える必要があります。人は、少し背伸びをした課題に取り組むことによって成長できるからです。「負担をかけたくない」という優しさを、時には「任せて見守る」という選択に変換することが、部下に対する本質的な優しさになるのではないでしょうか。
3️⃣ 「自分でやる」は短絡的な正解。中長期的には不正解
「自分がやったほうが早い」という判断は、今日の視点で見れば正解です。熟練のスキルと経験があれば、部下が3時間かかる仕事でも30分で完了できるでしょう。
ところが、時間軸を「半年後」に広げるとどうでしょうか。マネージャーが手を動かし続ける限り、組織の成果はその個人の限界値を超えられませんよね。「今の忙しさ」は、組織が次のステージを求めているサインかもしれません。短期的な効率を手放して長期的な成長へと舵を切る決断は、現場の重みを知り尽くしたリーダーにしかできません。
私の大好きな言葉として
ー鳥の目、虫の目、魚(さかな)の目ー
俯瞰して物事を見る姿勢ですが、いきなりではなく普段から心掛けるだけで見方が変わってくると思います。是非、トライしてみて下さいね。
2.組織の停滞
もし、今の状況が5年続いたとして、チームはどうなるでしょうか。マネージャーの指示なしでは動けない依存型のチームになっているのではないでしょうか。そして、一見順調に見える日常の中に、組織の停滞が潜んでいるのです。
『茹でガエル理論(現象)』という比喩表現がありますが、まさにそれです。(興味のある方は調べてみてください。)
でも、悲観することはありませんよ。今、この見えない課題に着手すれば、組織をより強く変えていくトリガーになりますから。
課題1.部下が「指示待ち・正解待ち」に陥る
部下が困っていると、すぐに助け舟を出していませんか。業務をスムーズに進めるためには、マネージャーの的確なアドバイスが欠かせませんが、この対応が恒常的だと、部下の中に「困ったら聞けばいい」「最後はマネージャーがなんとかしてくれる」という悪い意味での安心感が生まれてしまいます。決して部下にやる気がないからではなく、優秀な正解が身近にあるため、自分で試行錯誤する機会を失っているのです。この状態が続けば、部下はいつまでも「指示を待つ作業者」から抜け出せません。
課題2.現場と経営をつなぐ「情報パイプ」の目詰まり
マネージャーの最も重要な役割は、現場と経営をつなぐ「パイプ役」を果たすことです。しかし、日々の業務に追われていると、この情報伝達の機能が滞ってしまいます。「現場はこんなに大変なのに、経営陣はわかっていない」と感じることはありませんか。現場の状況が経営陣に伝わっていないとすれば、それは経営陣だけの責任とは言い切れません。マネージャー自身が忙しすぎるあまり、現場の熱量や課題を経営陣に届けられないでいる可能性があります。現場を守るためにも、一度作業の手を止めて顔を上げ、周囲を見渡す余裕が必要です。
課題3.属人化による「キミがいれば大丈夫」という組織のもろさ
「キミがいれば、この部署は大丈夫」。この言葉は最高の褒め言葉であり、同時に組織における見過ごせない弱点でもあります。
もし明日、マネージャー自身が急病で長期離脱したら、少なからず現場は混乱し、意思決定も止まるはずです。変化の激しい現代において、1人に依存する組織はあまりにも脆い状態です。
まず取り組むべきは、自分がいなくても回る仕組みをつくること。これは決して無責任な行動ではなく、むしろ組織に対する誠実な貢献の1つといえます。
3.現場に縛りつける原因
本音を言うなら、「任せたいのに、任せられない」。そんなジレンマは、マネージャー自身の優柔不断さが原因ではありません。組織の構造そのものが、現場を離れることを許さないからです。「なぜ自分は変われないのか」と悩む前に、まずは以下の3つの環境を少し引いた視点で見てください。きっと、課題の原因が見えてくるはずですよ。
【原因1】基準が不明確な人事制度
もしあれば、今期の目標設定シートを見返してみてください。記載されている項目のうち、「個人としての売上」や「担当プロジェクトの完遂」が大きなウエイトを占めていないでしょうか。それは会社がマネジメントを、求めながらも、評価の基準にはプレイヤーとしての成果を重視している証拠です。「部下の育成」といった評価項目があっても基準が不明確なため、結局は数字で見えやすい現場の成果が優先されている。こうした評価の矛盾が、マネージャーを現場に縛りつける原因の1つです。
【原因2】ルールや基準の欠如
「部下に任せて失敗した場合、どうするのか」という問いに対する明確な答えは、組織の中に用意されていますか?多くの企業では権限委譲のルールが存在せず、業務の振り分けがマネージャーの裁量に委ねられています。失敗した際のセーフティーネットがないため、業務を任せる行為は大きなリスクですよね。また、仕事を振ること自体が、職務放棄や丸投げとみなされる不安も生じがちです。明確な基準がない状況で、思い切ってリスクを取れる人は多くはいないでしょうね。(勘弁してくれ~な感じ)マネージャーが慎重になるのは、こうした組織としての支援体制が整備されていないためです。
【原因3】言語化されない育成方針
プレイヤーから管理職になったその日から、いきなりマネージャーとしての役割を求められる。こうしたケースは珍しくありません。でも、マネジメントに必要な技術や役割を、会社から教わった記憶はあるでしょうか。
プレイヤーとしての成功体験が、必ずしもマネジメントの成功を保証するわけではありません。むしろ、現場スキルに頼り過ぎることで、マネジメント特有のスキル習得を遠ざけるリスクがあります。それにもかかわらず、多くの企業では、
\ \ 「背中を見て学べ!」/ /
といった根性論がまかり通り、体系的なトレーニングが不足しているのが実情です。(泣)
そこで、なぜ企業はそれを放置するのか?ちょっと考えてみてください。…
答えは単純で、
『マネジメント教育への投資は成果が数字に出るまでに時間がかかるから』
です。短期業績を優先する組織では、こうした教育は後回しになりやすいものです。プレイングマネージャー問題が長年、個人の努力不足として処理されてきたのは、こうした構造的な怠慢の結果でもあると言えます。
4.仕事を任せる方法
さて、ここまで読んでいただいたアナタが、明日から部下に仕事を任せようと決意し、、
\ \ 「じゃあ!今日から〇〇さんにこの仕事を全部任せたよ」 / /
と、丸投げするようなことは言わないと信じていますが、いざそのときとなると不安がよぎり、結局自分で手を動かしてしまう、、なんてことはあるかもしれません。
それは性格の問題ではなく、「できる」か「できないか」で捉えているからです。
権限委譲は階段を一段ずつ降りるような実践的な技術で、いきなり全件委任するのではなく、部下の力量やリスクにあわせて任せ方を段階的に調整しましょう!
結果的に、着実に仕事を任せられるようになります。
- レベル1:情報収集 :高(判断は上司):「状況を調べて報告して。判断は私がする」
- レベル2:案の作成 :中(選択は上司):「選択肢を3つ考えて提案して。どれにするかは私が決める」
- レベル3:案の推奨 :低(承認は上司):「君の推奨案を持ってきて。私がGOを出したら実行していい」
- レベル4:実行・報告:無(事後報告) :「君の判断で進めていい。結果だけ教えてくれればいい」
いきなり高いレベルで業務を渡す必要はないので、「まずはレベル2の提案までやってみて」と伝えることで、リスクをコントロールしつつ、部下に経験を積ませられます。
大事なことは、部下と事前に「60点」の合格ラインを共有すること。
例えば、仕事を振る際に
「今回は社内用のプレゼンだから、見栄えは気にせず中身がわかれば60点で問題ない」と伝えてみてください。
このように伝えるだけで、部下は過剰な作り込みを避けられ、結果としてマネージャー自身も細部へのこだわりから解放されます。早めに「60点で出して」という合言葉が、チーム業務のスピードを上げるコツになると考えます。
5.マネジメントの役割転換
マネージャーが果たすべき役割は、部下がスムーズに業務を進められるよう伴走する支援者になることです。そのためには、具体的な対話の型と、マネージャー自身が目指すべき新しいゴールを設定しましょう!
1on1の貴重な時間を、単なるタスクや数字の確認だけで終わらせるのはもったいないですよね。進捗確認は簡潔に済ませて、部下への自立心を促す対話に比重を置くことが、自走する組織を築くための近道だと考えます。
部下への問いかけ1つで、「管理」から「支援」に変わるフレーズで実感してみましょう。
ケース1:「あの件、どこまで進んだ?」 ⇒ 「今、進めるうえで妨げになっていることはあるのか?」
ケース2:「なぜ遅れているの?」 ⇒ 「遅れを取り戻すために、私がサポートできることは何かある?」
ケース3:「次はどうするつもり?」⇒ 「この方針で進めるにあたり、不安や懸念点はあるのか?」
など。ポイントは問いの主語を「進捗(モノ)」から「部下(ヒト)」に変えること。1on1の空気が変わると気づいたときに、マネージャー自身も変わり始めます。
6.まとめ
最後に、マネジメントにおける重要な考え方を私たち(ソリッドコミュニケーション)から提言させていただきます。これまでは自己満足からくる「自分で手を動かして成果を出すこと」で納得されていたかもしれません。しかし、これからは「自分と共にチームが成果を出すこと」を最大の成果と捉える必要があります。結果として、「今週は現場の実務を何もしていない」と感じる日が来ても、焦ることはありません。現場との報連相がスムーズで計画通り進んでいれば、それがマネジメントが機能している証拠だからです。現場を離れて確保した時間では、以下のような「未来の仕事」に注力してくださいね。
- 部下の育成や次世代人材の采配
- 組織の壁を乗り越えた部門横断の連携
- 来期に向けた中長期的な戦略立案
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これが、会社がマネージャーに求めている本来の役割です。
現場を「軽視している」のではなく、未来へ「託す」決断に、チームはきっと応えてくれるはずです。
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